あしたの結び目FICTIONAL STORY

PORTRAIT / TO YOU AT SIX

いまの、
あなたへ。

III

六歳になるあなたへ。 家の中に残っていた、四つのこと。

FOUR MEMORIES / AGE 0–6

私たちが覚えている、四つの場面。

気になる言葉を、ひとつ。その日のことが、ひらきます。

窓辺で白い靴紐を結ぶ、六歳の子どもの後ろ姿
入学前の春助けるために伸ばした手を、途中で止めた。

生後四か月 / 八月の夜

眠るまで、角を握っていた。

午前二時を少し過ぎたころ。洗ったばかりのガーゼに替えると、右手が角を二度探した。手の中へ戻すと、そのまま目を閉じた。

私たちが覚えていること角を二度探してから、目を閉じたこと。

四つの場面を、続けて読む

生後四か月 / 八月の夜

眠るまで、角を握っていた。

午前二時を少し過ぎたころ。洗ったばかりのガーゼに替えると、右手が角を二度探した。手の中へ戻すと、そのまま目を閉じた。

三歳の冬 / 朝の台所

取っ手を奥へ向け、両手で包んだ。

わたしが取っ手を右へ向けると、あなたはコップを半回転させた。こぼすよ、と言いかけて、布巾だけをそばへ寄せた。

四歳の六月 / 雨上がり

左の長靴から、小石がひとつ。

濡れた長靴を逆さにすると、左からだけ丸い小石が落ちた。捨てようと拾うと、あなたは何も言わず、手のひらを開いた。

入学前夜 / 午後八時四十分

二度目の輪は、ほどけなかった。

右の紐が少し長く、わたしはいつものように手を伸ばした。あなたの指が先に紐をつまんだので、伸ばした手を膝へ戻した。

SIX YEARS OLD / SPRING

この先のことは、
まだ、だれにもわからない。

何を好きになって、どこへ行くのか。 いまは、まだわからない。

だから、言い切らない。 ただ、今日までにあったことを、話しておこう。

大きくなって、思い出さなくてもいい。 そのときのあなたが、こうしていたことだけ。

FOR THE YEARS AHEAD

大きくなったあなたが、
この日のことを忘れていても。
いつでも、ひらけるように。

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