SAMPLE B ―「一通の手紙」として仕立てた例
父と、最後に行った海― 母へ ―
二〇二五年 夏の記憶

お母さん。
覚えていますか。あの夏の、海のこと。

「海でも行くか」と言い出したのは、
めずらしく、お父さんのほうでした。
お母さんは驚いて、それから少し笑って、
冷蔵庫にあるもので、おにぎりを握っていましたね。

[ 写真:助手席からの朝 ]
出発の朝。ラジオと、昔ばなし。

車の中では、昔の話ばかりでした。
わたしが小さかったころの、
わたしの知らないわたしの話。
助手席のお母さんが、いちばん笑っていた。

[ 写真:防波堤、並んだ背中 ]
着いたのは、昼をすこし過ぎたころ。

泳ぐわけでもなく、三人で防波堤に座って、
おにぎりを食べて、ずっと海を見ていました。
お父さんは、ほとんど喋らなかったけれど、
それでよかったのだと、いまは思います。

「また来ような」

帰り際、お父さんはたしかにそう言いました。
帰りの車で、お母さんは少し眠っていて、
バックミラーの中の夕焼けが、
ずっと、後ろからついてきました。

[ 写真:夕暮れの車窓 ]
帰り道。

あれが最後の海になるなんて、
あの日は、誰も知らなかった。
でもお母さん。
あの日の海は、いまも、ちゃんとここにあります。
また、行こうね。

娘よりMASS. MEMORY GIFT

このページは、同じ記憶を「一通の手紙」として仕立てた架空の制作例です。
言葉が主役の記憶、親へ・パートナーへの贈り物に向いた形です。

あなたの記憶で、はじめてみる
MASS. MEMORY GIFT